短編小説6 子どもだからいいんだよー



 これはわたしが数年前、学童保育の職員していた時のことです。
 学童保育というのは共働きの親御さん子を学校の終わった放課後に預かるところです。
 全部で三十人弱くらいの子どもを預かっていたのですが、その中に気になる子が一人いました。春日ひろとくんという男の子です。
 その子はとにかく粗暴で、すぐに暴力を振るい、暴言を吐き、ものを投げ、壊し、ルールーというルールをことごとく破る子でした。
 こちらが注意すると決まって言うセリフがありました。
「子どもだからいいんだよー!」
 こどもの特権をよく分かっていて、それを遠慮容赦なく行使しているということです。
 子どもだからといって犯罪的行為が許されるわけはないというのがわたしの考え方です。
 ですが、日本の刑法は原則として二十歳未満の男女に対して少年法という特別なルールを適用しています。そして、同じ二十歳未満の少年少女でも年齢や状況によって次の三つに区別されています。

(1)犯罪少年
 14歳以上で罪を犯した少年を「犯罪少年」といいます。
 犯罪少年が起こした事件はすべて家庭裁判所へ送致され、少年の処分は審判不開始とならない限り、原則として少年審判により決定されます。14歳以上は自分の行動の是非善悪を判断し、その判断に従い行動できる能力(責任能力)があるとして、警察から逮捕されることも、刑罰を科されることもあります。

(2)触法少年
 14歳未満で犯罪にあたる行為をした少年を「触法(しょくほう)少年」といいます。
刑法第41条では、14歳未満の犯罪行為を罰しないと定めているため、触法少年が逮捕されたり刑罰を科されたりすることはありません。ただし警察による調査の対象となる場合は、少年審判による処分を受けることもあります。

(3)ぐ犯少年
 性格や環境に照らし、将来罪を犯す、または刑罰法令に触れる行為をするおそれがある20歳未満の少年を「ぐ犯(虞犯)少年」といいます。
 非行が見られる少年に適切な保護を与えることで少年の育成や犯罪の予防につながるとの観点から、いまだ犯罪行為にいたっていなくても少年審判の対象となる場合があります。

 ひろとくんは人に危害を加えたり、ものを壊したりしているので、暴行罪と器物損壊罪を犯しているのですが、まだ七歳なので逮捕はできません。触法少年というやつで、犯罪少年になるにはあと七年待たなければならないので、その間にわたしはひろとくんが人に重傷を負わせたり、殺したりしないか心配でした。
 親御さんはどうかというと、どうも気づかないふりをしたり世間(学校や学童)に対して心配してどうにかしようとしているアピールをしているだけで、実質何もしていないし、具体的な行動はしていません。医療機関か療育機関に行くべきだと思ってそう伝えはするのですが、そんなことも考えていると口で言うだけで、実行には移しません。それができていれば、こんな子には育っていないはずなのでまあ言っても仕方のないことですが。
 実際に表沙汰になるような事件が起こっても、それは続きます。おそらく一生続くでしょう。多少やんちゃな一面があるだけで、ひろとくんは普通の子です。親御さんにとってはそうなのです。何も見えないようにすれば、何も見ずに済むのです。

          *

 ある日、わたしは職員が多めにいる火曜日に有給休暇をもらい、昼過ぎにひろとくんの通う用田小学校に行きました。裏門近くの路肩に車を停めて校内に入り、校舎と校舎をつなぐ渡り廊下のようなところの脇で下校時刻の二時半を待ちました。
 帰りの会をしている声が中から聞こえてきて、やがて子どもたちがわらわらと校舎から出てきて昇降口のある左側の校舎へと通過していきます。わたしの顔を見知っている子も何人かいて、エプロンを着て笑顔を浮かべているので挨拶していってくれる子たちもいました。
 十五分ほど待ったところで、黒いランドセルを背負ったひろとくんが校舎から出てきました。
「おう、ひろくん。待ってたよ」
「へ? みむなに?」
 わたしの苗字が三村というので子どもたちからはみむと呼ばれています。
「ちょっとさ、さっきお母さんから学童に連絡があって、お仕事が早めに終わったからひろくん駅まで連れてきてほしい、って言われたんだよ」
 ひろとくんはぽかんとした顔をしています。
「東小川駅。駅前のとこにダニーズあるでしょ。ファミレスの。あそこで夕ご飯食べたいからだって」
「ダニーズ! ハンバーグ食べたい!」
 顔がパッと明るくなりました。
「ちょっとそれはできないって言ったんだけど、どうしてもってお願いされちゃったから断り切れなくて。だから、他の子には絶対内緒だよ」
 わたしはそう言ってひろとくんの手を取り、裏門から学校を出て停めてあった車に乗りました。
「ハンバーグ楽しみだね」
 助手席に座ったひろとくんのシートベルトを締めます。
「うん、でも夕ご飯には早くない?」
 エンジンをかけて、車を出しました。
「いいんだよー。大人はね、こういう中途半端な時間に自分の好きなものを食べたりお酒を飲んだりして、仕事をさぼってるんだよ。子どもは知らないだろうけど」
「えー、ずっる! ひろとも早く大人になりたいなー」
「でも、大人になるとねー。いろいろ大変だよ。だってやりたくもない仕事を一日中やらされて、したくもない付き合いに付き合わされるんだよ」
「え、じゃあ大人になりたくない。そんなのしたくないもん」
 わたしはウィンカーを出してハンドルを左に切り、車は片側三車線の幹線道路に入りました。駅とはまったく違う方向です。
「それがいいよー。子どもはね、子どもの特権があるからね」
「特権って?」
「特別な権利。ほら、ひろとくんよく言うじゃん。『子どもだからいいんだよー!』あれ、めっちゃいいよねー。めちゃくちゃしてもルール守んなくても子どもだから許されるって。あれだよあれ」
 ちらっとひろとくんの顔を見ると、納得したように何度も首を縦に振っています。
「あー、あれかー。じゃあやっぱ子どもの方がいいなー。自由に遊べるってことでしょ?」
 わたしは返事をせずに、赤に替わった信号を見てギュッとブレーキペダルを踏みました。
「あ、びっくりした。あぶねぇじゃん!」
「どっちがだよ」
 小さな声でわたしはそう呟きました。

         *

 先月に七十代半ばで亡くなった親父の家が小平にあって、何度か渋滞にはまり、着いたときには四時近くになっていました。ハル〇オンをたっぷり溶かしたファ〇タグレープを飲ませていたので、着いた時にはシートベルトを限界まで引っ張るような形で左側のドアにもたれかかり眠り込んでいました。
 寝顔は悪くないんだけど、中身がね。
 エンジンを切って助手席側に回り込み、ひろとくんのシートベルトを外しました。
 お姫様抱っこをして家の中に運び込み、二階北側の和室に寝かせます。広さは六畳で大きめの押入れがあり、窓はなく、出入り口は一箇所で外から鍵がかけられるようになっています。
 押し入れの中から布団を出して敷き、ひろとくんの身体をそっとそこに移しました。
 このままずっと寝ててくれれば、かわいいだけのままななのに。
 布団を肩まで被せ、わたしは部屋を出て外から鍵を掛けました。
 下に降りて居間のテレビを点け、冷蔵庫に入っていた缶ビールを何本か持ってきてソファに寝そべり、飲み始めました。
 ひろとくんいわくお母さんは働いておらず家でスマホをしているとのことで、じゃあいつもお迎えが遅くなるのは何なのでしょう。せめて延長料金がかからない七時ぎりぎりにお迎えに来ればいいのにと思うのですが。
 ひろとくんの言っていることが本当のことかどうかは分かりませんが、そもそも働いていなければ学童保育に預けることはできません。両親ともに月十六日以上、実労働時間五時間以上でかつ終業時間が午後三時以降という条件が課されていて、その条件を満たした就労証明書が提出されなければ入室は許可されません。ひろとくんのお母さんからはその条件を余裕でクリアした就労証明書が提出されています。ひろとくんの話が本当のことだとすると、あの証明書は偽造ということになります。偽造の就労証明書を作ることは、有印私文書偽造罪という犯罪となるおそれがあり、刑事罰の対象となります。
 そこまでして、なぜお母さんはひろとくんを学童に預けたいのでしょうか。
 わたしが思うに、ひろとくんは愛されていないのではないでしょうか。きれいごとや建前を抜きにしてはっきり現実を言うと、学校でも学童でも家でも邪険にされています。いわゆる厄介者として扱われ、その存在は忌み嫌われています。いて欲しくない存在です。
 学校では普通学級ではいられず、小川市が独自に始めたチャレンジルームというところに行っています。チャレンジルームとは学校になじめない子や教室で座っていられない子、不登校になった子など一室に集め、主に養護教諭が常駐して子どもたちを見るという試みです。 
 半年ほど前から始まったのですが、無論誰も勉強などせず、パソコンでゲームをしたり、床に転がしてある大きなヨギボーというクッションで寝転んで取っ組み合いをしたり、チャレンジルームから出て行って学校の廊下や校庭、外の道路を駆け回ったりと非常に大変なことになっています。養護教諭や職員は疲弊し、児童とその保護者と管理職との板挟みになり大きなストレスと怒りと憤りを覚えています。ですが、一度始めてしまったものは簡単には終われません。やっぱりなしで、というふうにはいきません。
 つまり、小川市はチャレンジルームという名のパンドラの箱を開けてしまったのです。
 現状を客観的に見ると、家とチャレンジルームと学童、その三者が時間区切りでひろとくんを押し付け合っています。彼がいない間は自分たちはホッとできて、時間が来たら引き取らなきゃいけないから仕方なく迎えに行く。口に出さなくても、あるいは口では逆のことを言ってはいても気持ちは伝わってしまいます。だからひろとくんはやけくそになり、むちゃくちゃをする。むちゃくちゃするからさらに邪険にされ、愛されなくなります。何という状況でしょう。どこかでボタンの掛け違えが起こって、負のスパイラルが加速していっています。
 あの子が自分の子どもだったらと思うとゾッとします。ひろとくんのお母さんは、生んでしまった以上、一生彼から逃れられません。それはもう呪いのようなものではないでしょうか。
 ひろとくんが安住できる場所などこの世にはありません。どこへ行っても不満は出てくるでしょうし、むちゃくちゃしたくなる衝動を抑えることはできないでしょう。
 彼の悪行に対して、誰かが責任を取らなければならないのですが、そんなことをする人はいません。子どものうちは本来は親が取るべきなのですが、それは難しいでしょう。それが出来るのであれば、こんなことにはなっていません。彼の悪行のつけを、お互いがお互い必死に押し付け合っています。責任をなすりつけ合っているのです。自分たちが預かっている時間に事故や事件が起これば責任を問われます。だから、もうみんな必死です。
 そして、どうか他の人たちが預かっている時間に事故や事件が起こって、できれば死んでくれればいいのにと皆が皆内心思っています。言葉ではいくら何を言っても。どれだけきれいごとを並べ立てていたとしても。
 そこに救いはありません。

        *

 ビールを飲んでいるうちに眠り込んでしまったようで、すっかり暗くなっていました。
 上から物音がしたので階段をのぼっていってみると、ひろとくんは起きていました。
「あっ、みむ! ここなんだよ!!」
 相変わらず威勢だけはいいようです。
「長野県の山奥だよ」
 わたしは微塵の躊躇もなく嘘を吐きました。
「山奥ってどういうことだよ! 誘拐かよ!」
 誘拐するつもりはなかったのですが、結果的にはそうなっているかもしれません。
「うん、そうだよ」
 すると、ひろとくんはわたしに向かって突進して殴りかかってきました。
「そんなことしたら、帰れなくなるよ」
「帰れるもん! 誘拐なんてしたらみむが警察につかまって逮捕されて刑務所に入れられるから大丈夫なんだよー!」
 そう言って、いわゆるベロベロバーといった顔をしました。
「へー、そうなるといいね」
 楽しい夜になりそうでした。

 下のダイニングの椅子に座らせて後ろ手にし、ガムテープで椅子の背を巻き込むような形でぐるぐる巻きにしました。蹴られると厄介なので、両足も椅子の脚にぐるぐる巻きにし、全然動けないようにしました。
 口は止めておこうと思っていたのですが、罵詈雑言が止まらないのでやむなくガムテープでふさぎました。
 携帯をポケットから出し、昨日登録しておいたひろとくんのお母さんの番号にかけます。
 ぷぷぷという音がして、ぷるるるる、ぷるるるるる、ぷるるるる、という音を十回ほど聞いた後、「はい春日です」という聴き慣れた女性の声が聞こえてきました。
「あー、夜分遅くすみません。学童クラブ〇〇の三村です。お世話になっております。今日わたし休みだったんですが、他の職員から先程ひろとくんがいなくなったとお聞きしまして、心配でちょっとお電話させていただいた次第でござ──」
「そうなんですよ! 学校を出てったってクラスの子が言っているみたいなんですが、学童の先生は見てないって言い張っていて、わたしさっき仕事途中で切り上げてきて帰ってきたところなので、これから学校行って先生たちとも話して、警察に届け出ようとしてるとこなんですよ」
「え、まだ警察に言ってないんですか?」
「ひろとのことだからまたどっかへ勝手に行っちゃったんじゃないかって、学校の先生とか学童の先生とか近所の人とかで学校の周りをさっきまで探してくれたみたいなんですが、それでも見つからなくて」
 あんたはさっきまで仕事してたって言ってたっけ。だからだよね。親いないと始められないからだよ。
「あ、じゃあ警察にはまだ言わないでください。わたし心当たりあるので」
「えっ! 本当ですか?」
「ええ、いまちょっと出張で小平の方に来ているんですが、お母さん来られますか?」
 そこで、やや間が空きました。
「え? ……こだいら」
「ご存じありませんか? 東京の多摩の方の小平ですよ。西武新宿線が通ってます」
 メモを取っているのか、また会話が途切れる。
「ひろとくんがこっちへ来てるんですよ。実はわたしの親父の家がありましてね、先月亡くなったんですが、まだ処分してなくて、そんな話をしたら行ってみたいということになりまして」
「は…? そんな……」
「とにかく来てくださいよ。住所をショートメールで送りますから。グーグルマップか何かで見てお母さまお一人で来てください。わたしはひろとくんのことについてお母さんとじっくり話がしたいだけなんです」
 それだけ伝えると、わたしは電話を切りました。そして、隣の家の住所をショートメールでお母さんあてに送りました。
 ひろとくんの方を振り返ると、涙を流して鼻水を垂らし、ついでに小便ももらしています。お母さんというワードが出たからでしょう。この悪童もママのおっぱいが恋しいのです。
「お母さん来てくれるって。良かったね」
 すると、ひろとくんは目を真っ赤にして何度も頷きました。

         *

 二階の窓から双眼鏡で道路を眺めていたのですが、お母さんが現れたのはそれから一時間半ほど経った頃でした。
 安室奈美似の美人で、男にはひどくモテそうな派手目の明るい女性です。
 案の定、スマホを見ながら隣の家のインターホンを鳴らしています。誰が住んでいるのかよく知りませんが、まあちぐはぐなやり取りがなされていることだけは確実です。
 そして、ひろとくんのお母さんの香織さんは周りをきょろきょろし出しました。すると、近くに停まっていた黒いセダンの中から灰色のスーツの男が出てきて、お母さんと何か話し始めました。
 警察でしょう。出てきたところを捕らえる手筈になっていたのが、段取りが崩れて状況がよく分からなくなったので、やむなくまた話しているといったところでしょうか。
 男が離れたのを見計らって、わたしはお母さんに電話をかけました。
「警察に言いましたね。黒い車から出てきた灰色のスーツの男が刑事ですよね?」
 おそらくこの会話も盗聴されているに違いありません。
「撒いてください。できなかったらひろとくんは死ぬことになります。警察を撒くのに成功したら、そこらへんの人の携帯を借りるか公衆電話から、この番号に電話をかけてください。本当の居場所を教えます」
 返事を待たずにわたしは電話を切りました。
 見ていると、お母さんは電話をポケットにしまい、しばらく呆然と佇んだ後、猛ダッシュでどこかへ走り去りました。黒いセダンが慌てて後を追っていくのが見えました。

 見知らぬ番号から電話がかかってきたのは、それから約二十分後のことでした。わたしはひろとくんにヨーグルトを食べさせているところでした。
「撒きました。どこにもいません」
「本当ですか?」
「はい、本当です」
 息を切らしていたし、声色からもどうやら本当のことでした。
「じゃあ、言います。先程インターホンを鳴らした家の向かって左隣の家です。お母さんの携帯はそこに置いて行ってください。おそらくGPSがついてますから」
「左隣……、撒くためにめちゃくちゃに走ったから、今どこかも分からないんですが……」
 とことんバカな母親です。
「駅まで戻ればいいんですよ。駅からどの道を歩いてきたかくらい覚えてるでしょう」
「いや、ちょっとそれも……」
「ひろとくんが死ぬことになりますよ」
 わたしが低くそう言うと、お母さんは沈黙しました。
 あっ、来るぞ。
 わたしはそう予感してスマホをスピーカーモードに切り替え、録音アプリを起動させました。
「分からないものは分からないんです。もういいので殺しちゃってください。わたしの言う事もまったく聞いてくれませんし、交通事故とかで死んでくれないかなと思ってたところなんです。先生が殺してくれるんなら先生が捕まってわたしは悲劇の母親になれるので、ちょうどいいんです。むしろ助かります」
 わたしは大きくため息を吐き、もうこの誘拐の意味がなくなったことを悟りました。
「分かりました。ひろとくんは解放します。警察がすぐに保護してくれると思います。ただし、この会話は録音させてもらっています。そのことをお忘れなきようお願いします」
 スマホを切り、ひろとくんに巻き付けてあったガムテープをすべて取りました。
「出てっていいの?」
「いいけど、先生が犯人だってことは言わないでくれるかな。それからひろとくんもいつまでも子どもではいられないから、強くならなきゃいけないよ」
 そう言ってわたしはスマホを取りだし、さきほどの部分を音量マックスにして再生しました。

 もういいので殺しちゃってください。わたしの言う事もまったく聞いてくれませんし、交通事故とかで死んでくれないかなと思ってたところなんです。先生が殺してくれるんなら先生が捕まってわたしは悲劇の母親になれるので、ちょうどいいんです。むしろ助かります。

「先生が逮捕されるってことになったら、これがさ、SNSって分かるよね。ツイッターとかユーチューブとかティックトックとかインスタとかで拡散されてお母さんが炎上することになるんだ。お母さんは分かってるだろうけど、ひろとくんも分かっとかなきゃいけないだろうね」
 ぽかーんと口を開けて必死に考えています。
「死んでくれた方が助かるんだって。そりゃこうなるよね。口に出さなくても、気持は伝わっちゃうもんね。もう自分で生きるしかないよ。子どもって最悪だよな」
 玄関までひろとくんを連れていくと、わたしはこう言って背中を押しました。
「ほら、お母さんあっちで待ってるって。行ってきな!」
 わたしが指差した方向は適当でしたが、ひろとくんはそっちの方向へ向かって走っていきました。



[了]


引用 ベリーベスト法律事務所 弁護士コラムhttps://keiji.vbest.jp/columns/g_young/4657/


2022年12月25日